最近とてもレアな質問があったのですが、フィッシングロッドやトレッキングポールなどに使用されているお馴染みのカーボンパイプ。
もちろんサイクルユーザーにとってはハンドル、シートポスト、フォークなどでもパイプ状の物は多数見かける事があり、更にはフレーム自体はもちろんクランクやステムなど立体成型された物も多数見る事が出来ます。
で、このカーボンパイプの寿命ってどの位なんですか?と。
つまり10年以上前に新品で購入したフィッシングロッドが何だか柔らかくなり張りを失って来た気がするとの事で、カーボン素材の寿命を教えて欲しいとの事でした。
上記諸々で使用されている市販のカーボンパイプとは、カーボンと樹脂で構成されていて正しくはCFRPと表記するのが正式です。
カーボン自体は糸状または粉状の物などを編み込んだり練り込んだりして、先ずは加工し易い形状にして色々な初期段階での材料として使用されています。
今回の様に一般的なカーボンパイプは炭素繊維として糸状や生地などへ加工され、それらを丸めたり巻きつけたりすればロッド状に成型出来ると言う事です。
炭素自体は無機物なので腐りもせず燃えもしないガラスやセラミックなんかと同様の物質ですが、これを上記の様に成型する際に、簡単に言えば接着剤的な役割で形作る為に樹脂が配合されています。
樹脂としてはエポキシが代表的な物となりますが、市販のカーボンパイプには全てこの樹脂も含有されているので、カーボン繊維100%だけのカーボンパイプは存在していません。
つまり冒頭の様にフィッシングロッドが経年や使用によりヘタって来るとは表現しますが、それは大抵の場合はカーボン繊維が劣化しているのでは無く、それらに配合されている樹脂が劣化して来ている事で今回の様に勘違いされるケースとなっています。
少しアゲアシの様にも聞こえるかもしれませんが、厳密に言えばカーボン繊維自体が劣化したり寿命を迎える事は常識の範囲内では無く、例えば何十年も前のフィッシングロッドも亀裂などの外的要因が無い限りは通常どおり使用する事が出来ます。
例えると100年前のガラスが今も変わらずにガラスとして機能しているのと同じ事です。
ただしフィッシングロッドにおいては含有されている樹脂自体が紫外線などの影響で劣化してきている場合もあり、その場合は多少フィッシングロッドの寿命に繋がるケースもあり得ます。
特に仕上げがクリアーでその部分が黄色味がかったりしている物などは樹脂の表面上が紫外線により影響を受けている証ですが、大抵の場合はサンディングして一皮剥いてやれば表面上の黄色味を取り除く事も出来ます。
その上で紫外線防止剤の入ったウレタンクリアーで塗装してやれば見違える様に蘇りますが、エポキシの上にウレタンって弾くんですよね、なのでキチンとサンディングした上で密着を高める為にミッチャクロンなどを事前に吹いておけば全く問題無くむしろウレタンの性能により機能的にもなります。
サイクルメカニック時代から何度もカーボンフレーム、カーボンホイール、カーボンパーツの修理を行って来ましたが、やはり無機質な素材として加工がし難いと言う印象がありました。
要するに切る、貼る、巻くをエポキシやウレタンと併用して行うしか方法が無いので、金属の様に溶かすとか生地の様に縫うなどの方法で一体化させる事が出来ない事がその主な原因です。
それらから比べればフィッシングロッドの修理などは非常に簡単でもありますが、テーパーやアクションが確実に変わってしまう点だけは物理的に避ける事が出来ません。
さて、と言う事で古いフィッシングロッドは特に寿命は気にせずに使用するか、どうしてもある程度の復活を試みてみた場合は、上記の方法で表面を塗装し直し全てのガイドとスレッドを新品に交換する事で多少なりとも効果は得られると思います。
以前、当時購入したアマゾンフリップを同じ方法で蘇らせた事がありますが、その後バズベイトのペラをティップ付近にブツケテしまいポキっとご臨終させました。
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